【特集】グリーではたらく女性部長座談会 ~「女性だから」ではなく「自分らしく」~

女性活躍推進が叫ばれるようになり、さまざまな企業で制度の充実やサポート体制の整備が進むなど、働く女性たちを取り巻く環境は少しずつ変化してきました。
今回は、グリーグループで部長を務める女性社員3名による座談会を実施。部長になってからの自身の変化、マネジメントにおいて心がけていること、管理職のやりがいについてお話をうかがいました。


山本

山本:グリー株式会社 コーポレート本部 コーポレート人事部 部長

2012年にグリーに入社、昨年12月より現職。制度設計、人事ガバナンス、タレントマネジメント、HRBPなどを担当。


佐野

佐野:グリー株式会社 開発本部 Customer&Product Satisfaction部 部長

2012年にグリーに入社。審査、QA、CS、パトロール、リスク対応など幅広い機能を持つCustomer&Product Satisfaction部で、昨年7月より部長を務める。


伊藤

伊藤:株式会社ExPlayマーケティングコミュニケーション部 部長

2018年3月に株式会社ExPlayに入社し、サービスの品質管理や社内外向け研修、広報業務を担当。同年9月より現職。

ベクトルの向きが「自分」から「組織」へ変わった

ーー現在の仕事内容について教えてください。


山本

山本:昨年12月からコーポレート人事部の部長を務めています。主な業務内容は人事制度設計や労務などの人事系ガバナンス、キャリア採用を含むHRBPやHRテックなどを担当する部署です。3歳の娘がいるのですが、チームのみなさんに業務で支えてもらいながら、子育てにも向き合っています。


佐野

佐野:お客さまに安心安全にサービスを楽しんでいただくためのQAやCSなどの機能を持つCustomer&ProductSatisfaction部で、昨年7月より部長を務めています。グリーのゲーム事業すべてを管轄しており、さまざまなリスクに対してジャッジするのがメインの仕事です。


伊藤

伊藤:ExPlayはお客さまのニーズや状況に合わせた柔軟なコミュニケーションを通じてカスタマーサポートを行う会社で、2018年9月からマーケティングコミュニケーション部の部長を任せていただいています。日々のサポート業務のほか、私たちの強みであるテキストコミュニケーションを生かして事業の可能性を模索するなど、新たな展開にもチャレンジしています。

ーー部長になる前と後で、どんな心境の変化がありましたか?


佐野

佐野:部長になってから、主体性や責任感が強くなったと感じています。何か起きた時は上司や会社がサポートしてくれますが、担当領域においては自分が一番のプロでなければならないと思っています。変化が激しい業界なので、5年後に今と同じような仕事をしていては生き残れないでしょう。そういった危機感をメンバーたちにどう伝えていくべきかといったことも日々考えています。


伊藤

伊藤:今まではずっと自分にベクトルが向いていましたが、部長になってからはメンバー、組織、会社といったより大きなところに目が向くようになり、皆がモチベーション高く成長できる環境をつくりたい、会社の次の未来をつくりたいと思うようになりました。役職が変わることでコミュニケーションをとる相手も変わってくるので、さまざまな方のお話を聞くことで自分自身のあり方を考えさせられ、視野が大きく広がったと感じます。


佐野

佐野:メンバーの成長が自分自身のやりがいになっているというのも大きな変化かもしれません。少しずつ自分のキャリアプランを見い出して前向きに成長していく姿を見ると「この仕事をしていてよかった」とうれしくなります。部長になって採用における権限が増し、その人の人生を背負っているという責任感もあるので、本人がやりがいを感じながら働いて、その結果会社からも評価されると「やった!」という気持ちになります。


山本

山本:シニアマネージャーの頃に産休、育休を取得したのですが、それまでは男性と同じように働いて認められることにもやりがいを感じていました。でも、ある女性のメンバーには「出産間際でもあんなに働かないといけないんだ、自分には無理だ」とグリーで続けるハードルを感じさせてしまったということが分かって、すごく反省したんです。その後部長にならないかというお話をいただいた時、育児をしながら限られた時間のなかでもしっかりと成果を出して、部長というポジションの可能性を自ら示すことで、働き方のひとつのロールモデルになれたらいいなと思いました。以前の失敗の贖罪というとオーバーかもしれませんが・・・。今は毎日16時半に退社していますが、ライフスタイルが多様化しているなかで、この会社なら安心してライフステージの変化を迎えられると思ってもらえるよう日々意識しています。もうひとつ、部長になって強く実感するのは、経営層が会社の未来を真剣に考えていて、社長をはじめ全員がフラットに議論し合っている健全な会社だということ。私が感じたことはメンバーたちに伝えていく責任があると思っていますし、オープンな文化は組織を強くするので、自分の部門でも意識して取り組んでいきたいと思っています。

ーー一方で、部長になってからも変わらないと感じる部分は?


伊藤

伊藤:変わらないのは会社を好きな気持ちです。役職者ならではの大変さもパワーに変えてしまえるくらい、今の仕事も会社のこともすごく好きです。


佐野

佐野:良いこと言われてハードルが上がっちゃった(笑)。率直に言えば部長になってからの方が仕事量や責任の重さは増えましたが、仕事の楽しさややりがいは以前と変わらないし、むしろ喜びが増したなと感じます。


山本

山本:チームで目的を共有するといった仕事のやり方や、メンバーを信頼する気持ちはこれまでと変わっていません。その延長ですが、部長になってから、自分だけではどうしようもない時には積極的に人を頼るようになりました。一緒に何かをやり遂げようという時に、一人ではなくチームで、という意識がより強くなったのだと思います。

一人ひとりの「当事者意識」を育てていく

ーーマネジメントにおいて心がけていることはありますか?


佐野

佐野:あえて「全員を見ない」と決めています。部下が40人ほどいるのですが、一人ひとりに逐一目を配るのは無理なので、その分マネージャーに裁量権を渡しています。一方で、部長として今向き合っておくべきメンバーには意識的に目を配り、食事をしながらのほうが話しやすいのか、会議室でミーティングしたほうがいいのか、本人に合ったコミュニケーションの取り方や伝え方をするよう心がけています。




伊藤

伊藤:私はいつも笑顔でいることを大切にしています。上司が大変そうだったり辛い顔をしていたりすると心配させてしまいますし、「相談しにくい」「近づきにくい」と思われしまうとコミュニケーションがうまく進まないので、常にウェルカムな待ちの姿勢でいます。反対に、定期的に行う1on1ミーティングや、最近元気がないな、業務が大変そうだなと気付いた時には直接席に行って声をかけるなど攻めの姿勢でいくこともあります。


山本

山本:常々意識しているのは、情報をオープンにすることです。自分の仕事にはどんな意味があるのか、全体のうちどの部分を任されているのか各自が理解していないと視野が狭くなり納得感も生まれにくいですよね。経営層のメッセージや想い、課題感など、部長だからこそキャッチできる情報はなるべく共有するようにしています。


伊藤

伊藤:組織として効率的に仕事を回すという意味では、何事も自分のところで止めないように気を付けています。来たらすぐに返す、誰かに渡すというように、とにかく溜めこまないようにしています。


佐野

佐野:私は仕事を依頼する際、相手によっては「いつまでにお願い」と納期を決めるようにしています。実は最初の頃は言いづらくて、そもそも私は人にお願いをするのが苦手なタイプなんです。いつまでにと伝えるのも申し訳ない気持ちがあったのですが、そうすると出来上がっていてほしい時にまだだったり、リマインドするのにもさらに気を遣ったり。これだとお互い不幸になるだけなので、思いきって「いつまでにやってほしいんだけど、できる?」と確認するようになったら、精神的なヤキモキはだいぶ減りました(笑)。あと、中長期的な視点で組織のことを考えるのも部長としての大事な役割なので、「ここは部長業務をやる時間」とブロックして、他の仕事が入らないようスケジュールを組んでいます。


山本

山本:部のメンバーとは、機会があるごとに「当事者意識の大切さ」について意識をすり合わせています。人事という仕事はものづくりとは少し離れた世界に見えますが、会社の一番の財産である社員がパフォーマンスを発揮できる環境を用意し、それによって会社の発展に貢献するという意味では事業成長と密接につながっています。自分の仕事がいかに会社に寄与しているかを認識することは、仕事をするうえでプラスに働いていると思います。

「女性だから」ではなく「自分らしく」

ーーメンバーとのコミュニケーションで意識していることはありますか?


佐野

佐野:女性の部下たちには、この先どんなふうに働いていきたいのか、選択肢がたくさんある女性だからこそ真剣にキャリアを考えてほしいと本音ベースで話しています。子育てももちろん大事なことですが、子育てだけで自分は納得できるのか、キャリアを築きながら両立したいのか、いざ子どもができた時に自分がどうしたいのかを考えておくことは必要です。私自身、以前の上司から同じことを言われたんですね。将来のことを見据えてキャリアアップを勧めてくれ、本当に感謝しているので、自分も同じように部下の力になれたらと思っています。自分がロールモデルになれたら幸せだなと思いますが、この会社は男女関係なく、自分らしく働けるということを伝えられたらいいですね。


山本

山本:1on1ミーティングでは、業務の話はなるべくせずに仕事やプライベートの悩みの相談に乗ったりしています。数ヶ月ごとに必ず聞くのは、「これからのキャリアをどうしたいか」。夢や希望は口にしないと周りも分からないし道もつくれないので「やりたいことはとにかく口に出そう」と伝えていたら、「あの仕事をやってみたい」「こうなりたい」と皆が自身のことをオープンに語ってくれるようになりました。


伊藤

伊藤:私自身、メンバーのお手本となれるような域にはまだまだ達していないのですが、チームには30代のメンバーが多いので本人たちがどんなキャリアを描いているのか、もっとコミュニケーションをとって一緒に考えていけたらいいなと思っています。


山本

山本:人事部には専門性が必要な仕事が多いのですが、その分業務の幅が広がりづらいという面もあります。そこで今取り組もうとしているのが、いろいろな業務を経験できる横軸のローテーションを通じて個々が多様なスキルを磨けるチャンスをつくることです。また、これからはマネージャーや部長といったポストをあくまで一つの役割と考えて、部長からマネージャーへ、マネージャーからスタッフへといった縦のローテ―ションもできたらいいなと考えています。実際にそのポジションを経験することでしか分かり得ないことはたくさんありますし、人事であればなおさら必要な経験だと思うので、ぜひやってみたいなと思います。


佐野

佐野:女性のキャリア構築という点で、グリーには女性部長が少ないと感じますが、山本さんは現状をどう見ていますか?




山本

山本:社会から女性の登用が叫ばれるようになったことで、一部の会社では成果の内容からだけではなく”女性である”ということをひとつの理由に女性を管理職にするというケースもあるようですが、グリーでは、成果を出せば男女関係なく評価される文化があるので、そうした施策の必要性は感じていません。男女差を感じずに働けるのは素晴らしいことだと思います。一方で、子育て中の女性をはじめ、働き方や勤務時間に制約のある女性が管理職のポジションに就くというのは勇気がいることです。本人がなかなか踏み切れなければ周囲も無理にはすすめられませんし、ロールモデルの少なさもあり「マネージャーになりたくない」と管理職を希望しない女性が多いのも事実です。だからこそ私自身がロールモデルの一人になれたらと思っていますし、社会が変わるためには、まず一つひとつの会社が変わっていかなければいけません。育休をとる男性も増えていますが、男性社員たちにもこうした話題にもっと興味を持ってもらえればいいなと思います。

主体的に考え、自ら動ける人材の創出へ

ーー今後どんなことにチャレンジしていきたいですか?


山本

山本:社内ではこの分野の第一人者なんだという自覚と責任感、そして柔軟な対応力を持つプロ集団を育てていきたいという思いがあります。私自身はポジションや役割、働く場所にもこだわりがないので、自分が貢献できるところがあれば積極的にコミットして成長し続けたい。今の部長という役職がコンフォートゾーンになってしまうと成長も止まってしまうので、常に自分を鼓舞していきたいと思っています。大きなゴールとしては、たとえライフステージが変わっても、社員の皆さんにずっとここで働きたいと思ってもらえる会社にしていきたいです。グリーにはファミリー休暇といった多様な制度や福利厚生があり、年功序列ではなく能力で評価されるため年齢に関係なくキャリアアップしていくことが可能です。人々の生き方、働き方が非常に多様化していますが、これからも時代に合わせて働く環境の充実化を図っていきたいと考えています。


佐野

佐野:どんな時も主体的でありたいと思っています。誰かに言われたからやるのではなくて、自分で考えて納得してやるというのは何においても大事な姿勢です。外部環境が変わっていくなかで、指示待ち人間になってしまうと将来がきつくなっていきますから、メンバー一人ひとりが主体性を持った組織にしたいですね。あとは、視座を上げ、会社としてこの判断が正しいのかという視点を持つことを忘れないようにしたいと思っています。


伊藤

伊藤:私もまさに「主体性」というキーワードを思い浮かべました。会社が新たなチャレンジに向かって前進している今、メンバーたちも一緒に進んでいくために全社でマインド改革に取り組んでいるのですが、一人ひとりがお客さまのことを想い、何ができるかを考えて自ら動けるようになれば組織力もサービスの品質も高められるはずです。


佐野

佐野:でも、正直に言って主体性を育てるって難しくありません?(笑)。


伊藤

伊藤:同感です。関連する取り組みとして最近始めたのが、何もアナウンスせずミーティングをするとただ参加しているだけになってしまう人もいるので、「今回は○○さんと○○さんが参加メンバーです」と周知して行なっています。本人たちも周囲も自然と情報を積極的にとりにいく意識が高くなっていて効果を感じています。


佐野

佐野:部内で実験中なのが、チームの目標を決めるにあたって全員に宿題を出して、この半期で会社がどうなるのか、本部がどうなるのか、チームがどうなるのかをそれぞれに考えてきてもらうこと。会社の動向に関係なく自分のやりたいことをするのではなくて、筋道を立ててTo doを考えていくことで仕事のとらえ方が変わることを期待しています。アクションプランを考えること自体が一つの勉強になると思っています。うまくいっても失敗しても、共有しますね(笑)。

ーー本日はありがとうございました。