【Pick Up】社内報冊子「ジーマガ」9号より「外から見たグリー:常識の枠の中にいても面白いコンテンツはつくれない」

カードゲーム業界に旋風を巻き起こした「カードファイト!! ヴァンガード」をはじめ、メディアミックスプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」、「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」など、数々のコンテンツを生み出してきた株式会社ブシロード。
その創立者である木谷高明さんに、コンテンツ開発で大切にしていること、グリーグループへの期待をお聞きしました。

※社内報冊子「ジーマガ」vol.9より掲載

【PROFILE】

ブシロードグループ創立者 木谷 高明さん
1960年生まれ。大学卒業後に入社した山一證券勤務を経て1994年にブロッコリーを設立。2007年に退社後、ブシロードを立ち上げる。「カードファイト!! ヴァンガード」「バンドリ!」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」など次々とヒットコンテンツを生み出す。2017年にブシロード社長を退任。コンテンツ開発の最前線で、精力的に活動を続けている。

ーー木谷さんのご経歴と最近注力していることを教えてください。

木谷さん(以下、敬称略):大学卒業後、証券会社を退職して1つ目の会社を立ち上げたのは1994年。「ベンチャー」という概念すらなかったような時代でした。キャラクタービジネスを展開し2001年には上場を果たしましたが、いくつかの事情で2007年に社長を退任することに。同年ブシロードを設立し、第2のスタートを切りました。
カードゲームに着目したのは、ビジネスとして発展の余地が大きいと確信したからです。当時のカードゲーム市場は停滞期に突入し、積極的に新商品を出している会社はなかった。今が攻め時だと思いました。「カードゲームで世界一になる」という目標を掲げ、2011年に発売した「カードファイト!! ヴァンガード」で業界の流れを変えることができたと自負しています。
ここ数年は音楽事業にも力を入れています。二次元のキャラクターと三次元のリアルをリンクさせた「ラブライブ!」プロジェクトに携わったことがきっかけで音楽の可能性を感じ、声優自身がバンドを組んでライブをするメディアミックスプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」や、舞台とアニメのキャラクターを同じキャストが演じる「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」などのコンテンツを生み出してきました。DJをテーマにアニメ、ゲーム、声優によるライブなどを展開する新プロジェクト「D4DJ」も動き出しています。

ーーコンテンツ開発で大切にしていることは何ですか?

木谷:「構想力」です。「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」を企画したのは、僕自身2.5次元舞台を観ていてアニメキャラクターの声と舞台俳優さんの声が違うことにずっと違和感があって、これを一致させたかったからなんです。このコンテンツが多くの人に受け入れられているということは、実は皆、同じような違和感を持っていたということなんじゃないでしょうか。「BanG Dream!(バンドリ!)」がなぜここまでファンに愛されるのかというのも、「アニメとリアルの垣根を越えてキャラクターに会わせてくれてありがとう!」という喜びと、「声優なのに楽器が弾けるんだ!」という驚きを与えているから。2012年にグループ会社化した新日本プロレスリングはIP(知的財産権)としては40年を超えていましたが、少しほこりを被っていてもきれいに磨いてみたら「やっぱりいいじゃん!」と魅力を再発見してもらえました。
「これはこういうもの」と常識の枠の中で見てしまった時点で、面白いコンテンツはつくれないと思っています。マーケットにあるものの中から正解を見出そうとしても、それはすでに世の中にあるものの最適解に過ぎない。マーケティングで可能なのは“ヒット”まで。“大ヒット”を生み出すには、隠れた潜在需要を見つけなければなりません。だから、原案は机の上からは生まれないというのが持論です。
一昨年に経営権を返上して現場の最前線に戻ったのも同じような考えからです。私は毎朝、電車で会社に通っているんです。運転手付きの車に乗ったら、タクシー広告も電車広告も見られない。電車に乗って皆スマホで何やっているのか、新聞を読んでいる人がどれくらいなのかも分からないじゃないですか。一般の人たちの感覚がどこにあるのかをつかんでいなければ、心に響くものを生み出すことはできません。「現場感」も大切にしていることの一つですね。

ーー日本のエンタメ業界をどのように見ていますか。

木谷:業界全体がかなり煮詰まっていて、最終局面を迎えているといってもいいと思います。スマホゲーム、音楽、出版、映像などあらゆるジャンルを含めて陣取り合戦していますよね。カテゴリ同士もミックスしているし、アメリカではメディア×エンタメ×スポーツの融合が進んでいます。ここにITも加わりつつあり、日本でもこうした動きが起こってくるでしょう。アプリゲーム市場に関しては、これからも海外勢が伸び続けると思います。今は海外ゲームのシェアが2割くらいですが、5割までいくんじゃないでしょうか。
2~3年サイクルの環境変化に合わせて、企業も変わっていかなければいけません。5年先の経営計画を立てても、正直あまり意味がない。間違っていたと気付いたら早めに引き返すのも一つの手です。いけると思ったらどんどん力を注げばいい。判断や動き出しのスピードが生き残るためのカギになってくると思います。

ーーグリーグループに対する印象や今後期待することをお聞かせください。

木谷:ポケラボさんと「戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED」でご一緒して感じたのは、粘り強さがあるということ。割とドライなのかなと思っていたら全然違って、うちのスタッフよりも作品のことを知っているなと思うくらい。クリエイターへのリスペクトがすごくあるんだなと感じました。しっかりした作品を仕上げてくれるので安心感もあります。
今は厳しい時代なのでなかなかホームランを狙えないかもしれませんが、グリーさんはヒットじゃなくて二塁打、三塁打を狙える会社だと思っています。いいところを狙えるIPで今後もぜひご一緒したいですね。

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