待望の『アサルトリリィ』が遂にゲーム化。4社共同で挑んだ『ラスバレ』誕生秘話

武器×美少女をテーマに、舞台やアニメなどさまざまなメディアで展開する『アサルトリリィプロジェクト』。今年1月にリリースしたスマートフォン向けゲームアプリ『アサルトリリィ Last Bullet』(以下、『ラスバレ』)は、事前登録数が50万人を突破するなど大きな話題を呼びました。共同開発にあたったのは、株式会社TBSテレビ、株式会社ブシロード、株式会社シャフト、株式会社ポケラボの4社。壮大なメディアミックス作品の背景とこれからの展開をそれぞれのご担当者に伺いました。

安田 孝一安田 孝一:株式会社シャフト 制作部 プロデューサー
『アサルトリリィ BOUQUET』のアニメーションプロデューサー。『ラスバレ』でもゲーム内アニメーションのプロデューサーを担当。

源生 哲雄源生 哲雄:株式会社TBSテレビ メディアビジネス局 ライセンス事業部
2016年から『アサルトリリィ』に関わり、メディアミックスの発起人として、アニメ化やゲーム化を行う。

中山 淳雄中山 淳雄:株式会社ブシロード 執行役員 海外営業本部 本部長
『アサルトリリィプロジェクト』の製作総指揮を実施するブシロードにおいて、ポケラボと共に『ラスバレ』の共同開発を行い、主にプロモーションを担当。

小林 正英小林 正英:株式会社ポケラボ アライアンス事業部
『ラスバレ』の開発と運用を担当しているポケラボにおいて、プロデューサーとして社内キックオフ時からプロジェクトに参画。

作品の魅力と各社の縁が引き合い、製作委員会を結成

ーーこの4社が『ラスバレ』の共同開発を行うことになった経緯をお聞かせください。


源生

源生:『アサルトリリィ』のアニメ化の版権元であるアゾンインターナショナルさんにご提案したのは、2016年秋に『私立ルドビコ女学院』とのコラボで舞台作品を2回ほど上演したくらいのタイミングでした。キャラクター、チャーム(武器)の豊富さとデザイン性から『アサルトリリィ』はゲームと親和性が高いと感じていましたので、その時点でゲーム化の構想はありましたね。


安田

安田:10年ほど現場を離れていた源生さんが、またアニメ業界に戻って来られたタイミングで『アサルトリリィ』のアニメ化を弊社にお声がけいただきました。源生さんとは、現社長の久保田が制作で下請けをしていた時期から一緒にお仕事をしていたそうで、こうした人の縁や恩を大事にする久保田の「また源生さんとアニメを作ろう」という声もあって、共同開発がスタートしましたね。


源生

源生:2017年初頭にシャフトさんで『アサルトリリィ』のアニメをお引き受け頂きましたので、同年4月ごろ20年来お付き合いさせて頂いております『BanG Dream!(バンドリ!)』や『ラブライブ!』で実績のある木谷高明さん(当時はブシロード代表取締役社長で現在は代表取締役会長)にゲームを含めたメディア展開を依頼しました。すると木谷さんが、共同開発先としてポケラボ社長の前田さんを紹介してくださり、『アサルトリリィ』のゲーム化が始まったんです。通常よりもスムーズに製作委員会が組成できたのは、シャフト作品のブランド力はもちろん、ブシロード、ポケラボともに親和性のあるタイトルだと共感頂けたからだと思います。


中山

中山:当時のブシロードは展開力を武器に自社作品が目立っていた時期で、TBSさんやシャフトさんのように作家性・作品性の高い作品を取り組まれている会社と一緒に、という取り組みは新しいものでした。そこに『戦姫絶唱シンフォギアXD UNLIMITED』ですでに共同アプリ開発の実績もあったポケラボさんをお誘いし、いかにその作品性を生かしながら弊社のプロモーション展開を大規模に行うか、という両立を目指す挑戦でもありました。

アニメーション、イラスト、シナリオ、音楽、すべてにこだわり抜いた

ーー『ラスバレ』をプレイする上での見どころはどんな部分でしょうか。


小林

小林:大きく3つあります。1つ目は、アニメの世界観をクオリティ高く融合させているところ。2つ目はイラスト。ゲームで描き下ろしたイラストにも、他タイトルで培った知見を全て発揮しました。クオリティベースを上げつつ、より効果的に見せられる工夫をして仕上げています。そして最後にシナリオ。多種多様に展開されているタイトルなので、シナリオ制作の難易度も高かったのですが、過去の知見を生かしつつ、原作者の尾花沢軒栄先生と相談しながら練り上げました。


源生

源生:ポケラボさんはここ数年、週に一回尾花沢先生の事務所に通いつめています(笑)。それだけ丁寧に原作サイドと向き合っていただいているのが分かりますよ。

ーー今回特に話題になった、ゲーム内でアニメ第1話を全て見せるという提案はどなたが出されたのですか?


安田

安田:久保田(社長)が、リリース一週間ほど前に言い始めました(笑)。ギリギリのタイミングで、しかも前例がないことなので関係者も戸惑いましたが、結果的にゲームからアニメの続きを見始める方もいると考えると、素晴らしいアイデアだったと思います。


小林

小林:今回はアニメをゲームでどう再現するかが大切だったので、音楽に関しても、アニメの音楽を多く盛り込んでいます。


中山

中山:アニメとゲームでは音楽の制作方法が異なる部分もありますが、アニメ文脈にも符合する信頼できる方に頼みたいということで、源生さんと久保田社長から、アニソン業界で実績のある音楽プロデューサーの斎藤滋さんをご推薦いただきました。



クリエイターのこだわりのあまり「巻き戻し」が多発?!

ーー他にも『ラスバレ』ならではの制作秘話はありますか?


中山

中山:メディアミックスでプロセスを共有しながら同時進行しているので、ユーザー側だけでなくクリエイター側も互いに触発しあってそれがクオリティに影響しあっている点がすごく面白かったですね。2020年1月の舞台(『アサルトリリィ League of Gardens』)にはアニメの佐伯昭志監督が来て「むちゃくちゃ面白い!」と感動していて、その後のアニメ制作の力の入れ方にも影響を与えているのが感じられましたし、8月のアニメ1〜2話の関係各社での試写会後には全員がその出来に感動してしまって、ポケラボさんが突然「ヤバイ!」と言い出した。あれを観なかったら、その後あんなに開発を作り直すこともなかったですよね。


小林

小林:試写会後社内に衝撃が走りましたよ(笑)。ポケラボの開発メンバーと「このままでは全然ダメだ」となり、アニメの世界観や良さを生かせるように、かなり巻き戻して作り直しました。


源生

源生:小林さんが試写会の後に「源生さんマズイです!」と言いに来て、どういう意味かと思ったら「僕たちのレベルが届いていない、予想をはるかに上回る素晴らしさでした」と(笑)。でも、ゲーム内アニメに関して、ポケラボさんからシャフトさんに要望も出していましたね。


小林

小林:そうですね(笑)。ゲーム内のオープニングをシャフトさんに制作していただいたのですが、アニメ本編が素晴らしかったので、それと同じ感動をゲームのプレイヤーにも届けたいと思いまして、もっとググッとクオリティを上げてほしいとご相談したことがありました。


安田

安田:うちもアニメ制作に関してギリギリまで粘ることはありますが、ポケラボさんもどこまでも粘るし、どこまでも巻き戻って作り直すなぁという印象は受けましたね。同時期に並行してアニメとゲームを制作していたので、僕らが試行錯誤して色味などを決めれば、ポケラボさんもそれに合わせてまた作り直して。オープニングも他のアニメーションも先行段階から付け足したり作り直したり、まぁどこまででも巻き戻すんです(笑)。


小林

小林:シャフトさんのアニメ本編のクオリティの高さがあり、ゲームはアニメに比べて制限が多い分、どうしても見劣りするところがあるとはいえ、『アサルトリリィ』の名前を汚すわけにはいかないと思って、戻りに戻って制作しましたね。

これまでのファンも、これからのファンも、一層好きになってもらえるコンテンツに

ーー完成した『ラスバレ』に対して、どのような感想を持たれましたか?


安田

安田:ゲームの完成度の高さはもちろん、さすがのブシロードさん・ポケラボさんで、リリース直前や当日は街や駅や、どこにいっても『ラスバレ』の広告を見かけて感動しました。ソシャゲはアニメよりも認知してもらうのが難しいかと考えていたのですが、そうした話題づくりの姿勢から、メディアミックスの展開としても同等なタイトルとして作り込まれている印象を受けました。




中山

中山:『ラスバレ』はリリース後から現在まで、レビュー評価の高さと収益性にも直結するKPIが両立しているのが素晴らしいところです。『アサルトリリィ』の原点であるアクションドールからのコアなファンから膨らんでいったユーザー層が納得できるものをインタラクティブにつくり、結果的に50万人もの方々が熱量高くゲームの世界に入ってくれたのだと感じます。


小林

小林:SNSなどでユーザーさまの声を見ると、ゲームだけでなくアニメや舞台を含めた作品全体を楽しんでくださっているファンがたくさんいるのがひとつの特徴です。レビューの高さは『アサルトリリィ』の軌跡を知る愛の深いユーザーさまが支えてくださっているのだと思います。

ーー最後に今後の展望や、これからの展開について教えてください。


小林

小林:今はほぼ一人一台スマホを持っていて、基本プレイ無料なので、ゲームは手に取りやすいメディアだと思います。『ラスバレ』をプレイしてもらうことで、より一層『アサルトリリィ』を好きになって、他のメディアミックス作品にも興味を持っていただいて、という循環が生まれてほしいと思います。


安田

安田:アニメ制作は、オンエア開始後の作業はそれまでに比べて少なくなりますが、ゲームはリリースしてからが戦いの始まりだと感じます。大変な時間がこれからも続いていくと思うので、僕らとしては盛り上げるお手伝いをしていきたいです。


源生

源生:熱量も予算もかけて作り込んだものなので、長く愛されてほしいというのが一番です。今のファンの皆さんを大事にしつつ、もっと多くの人にどんどん広がってほしいし、大きく成長させたいですね。


中山

中山:具体的にはまだ言えないことが多いのですが、今後の予定もたくさんあります。2022年1月の舞台公演の他にも色々とサプライズを用意しているので、ファンの皆さんも期待していただければと思います。