【特集】「審査」ってどんな仕事?グリーのアプリ審査チームに聞きました

インナーコミュニケーションチームです。
グリーグループはゲーム事業、ライブエンターテインメント(現:メタバース)事業、メディア事業など幅広い事業を展開しており、各事業の審査業務を担っているのが「App Reviewチーム(通称アプリ審査チーム)」です。今回は、チームメンバー3名による座談会を実施。普段の業務内容や心がけていること、今後の展望について新型コロナウイルス感染症の防止のためオンラインで取材しました。ぜひ、ご覧ください。


三枝

三枝:グリー株式会社 開発本部 Customer & Product Satisfaction部 App Reviewチーム マネージャー

前職ではデータセンターや大手通信キャリアに出向しサービス管理を担当。2011年にグリーに入社し、一貫して審査業務に従事。


鶴見

鶴見:グリー株式会社 開発本部 Customer & Product Satisfaction部 App Reviewチーム

2010年グリーに入社。CS業務を経て、2015年よりアプリ審査チームへ。リアルイベントやキャンペーンの審査を担当。


清水

清水:グリー株式会社 開発本部 Customer & Product Satisfaction部 App Reviewチーム

2018年グリーに入社。ネイティブゲームやバーチャル配信アプリ「REALITY」などの審査を担当。

実は奥が深い!「審査」の世界

ーー「アプリ審査チーム」とはどんな部署なのでしょうか?


三枝

三枝:グリーには「お客さまに安心安全なサービスを提供する」をミッションとするCustomer & Product Satisfaction部という部門があり、この中に品質や機能をチェックする「QAチーム」などと並んで「App Review(アプリ審査)チーム」があります。私たちの役目は、さまざまなプロダクトの企画内容や表示について法令やガイドラインの観点から問題がないかをチェックすることです。

ーー「審査」と「QA」はどのように違うのでしょうか?


三枝

三枝:それ、よく聞かれるんですよ(笑)。基本的にQAは動作の品質を担保する役割があり、審査は動作そのものというより、それ自体が法令やガイドラインに準拠しているかという観点で仕事をします。たとえばアプリの動作を見てQA側はバグがあったら直しますが、審査側はプロダクトの想定通りの動きや表示がなされていても、それがそもそもOKなのかNGなのかを判断するので、両者は似ているようで大きく違うんです。

ーーアプリ審査チームの具体的な業務内容についてお聞かせください。


三枝

三枝:私はチームのマネージャーを務めています。守備範囲は広く、ゲーム事業だけでなくライブエンターテインメント(現:メタバース)事業とメディア事業の審査業務も担っています。具体的には、SNS「GREE」のプラットフォームシステム「GREE Platform」におけるサードパーティデベロッパーのアプリ品質、内製化しているウェブゲームやネイティブゲームの仕様、企画中のキャンペーンやリアルイベントの内容チェックに加え、直近ではリリース前の不当表示リスクの検証業務にも取り組んでいます。このほか、AppleやGoogleのガイドライン管理など、グリーグループ全体でリスクやトラブルを未然に防ぐことに努めています。


鶴見

鶴見:リアルイベントやキャンペーンの審査を担当しています。「ファン感謝祭」やゲームの世界観を楽しめる音楽コンサート、公開生放送など、お客さまを実際に招待して実施するイベント、またリアルインセンティブのプレゼントやSNSと連動したキャンペーンの審査に携わっています。キャンペーンに関しては景品表示法に基づいて景品の価格や表示に問題がないかをチェックするのが主な仕事で、今年に入り法務部門から移管されたメディア事業の審査業務では、景品表示法に加え薬機法を基準にしたチェックも行っています。


清水

清水:私の担当は主にネイティブゲーム/アプリの審査です。「消滅都市」「アナザーエデン」などのタイトルや、ライブエンターテインメント(現:メタバース)事業が手掛けるバーチャル配信アプリ「REALITY」において、ガチャやイベントなどの審査を行っています。アプリやゲーム内の審査については、景品表示法だけでなく、資金決済法や刑法(賭博)、また各配信プラットフォームや業界団体のガイドライン等、様々な観点から審査を行っています。

ーーゲーム事業の審査業務と、ライブエンターテインメント(現:メタバース)事業やメディア事業の審査業務に違いはありますか?


三枝

三枝:ゲーム事業で培った知見を他の事業に応用できるところは多くありますが、メディア事業に関してはこれまで見てこなかった薬機法などが要となるので、法務部門が持っているナレッジをしっかり引き継いで活用、相談しながら審査を進めるようにしています。


鶴見

鶴見:新しい分野の審査業務に取り組む際には、まず自分自身で「知る」ことが大切だと思っていて、VTuber事業の審査業務立ち上げにあたっては「REALITY」を使い倒してどんな機能があるのかを確認していきました。


三枝

三枝:ライブ配信、めっちゃ見てたよね(笑)。


鶴見

鶴見:毎日2時間くらい…?子どもを寝かしつけながら音声だけ聴いたりしてました(笑)。アプリを使っていくうちにゲーム事業の審査との違いが分かってきたので「こんな観点が大事」と要点をあげていき、課金のシステムや他社の類似サービス内容なども調べつつ仕様書にまとめました。仕様書は事業担当者も参考にしてくれたので良かったですね。新しい仕事に入る際には分からないことや気になることをつぶしていき、念入りに準備するようにしています。現在はメディア事業と薬機法について研究中です。

OKかNGか判断するだけが審査じゃない

ーープロダクトや企画の担当者など他部門との連携が多いと思いますが、そのなかで心がけていることはありますか?


鶴見

鶴見:大きなイベントを実施する時はキックオフMTGが開かれ、企画担当者をはじめ法務、リスクマネジメント、個人情報管理、広報、CSなどさまざまな部門・チームの方々が集まります。そこであがった疑問や質問に対して景品表示法観点やこれまでの知見からアドバイスしたり、各部門に働きかけて企画を進めていってもらったりと審査以外の連携業務も重要です。審査自体に関しては、景品や規約の作成に関する相談に対応したり、適宜進捗確認を行うなどしてイベントが無事実施できるよう企画担当者と二人三脚で企画を進めています。


清水

清水:普段から「提案すること」を心がけています。グリーグループのさまざまなプロダクトを横断的に見ていて「この時にはこんな対応や工夫をした」という知見がたくさんたまっているからこそ、「ここをこう変えたらOKになるよ」「こうしたほうがお客さまにとって良いのでは」という発展的な提案ができます。ただOKかNGかを判断するだけでなく、事業側やお客さまの目線に立ってより良い答えを導くためのサポートができたらと考えています。そのためには他部門との距離感を近づけることも大切です。相談してもらいやすいカジュアルな雰囲気をつくったり、問い合わせをもらったらすぐに席に行って話したり、ミーティングの場を設けたり。相手の課題を自分事としてとらえ、プロダクトを一緒につくっている仲間なんだという気持ちで仕事をしています。


鶴見

鶴見:キャンペーン審査では、プロダクト側が「どうしてもこの景品を採用したい」という一方で、そのまま進めてしまうと規制に引っかかってしまうという事態が発生することがあります。そういった際には「景品を変えず、募集の仕方を変えてはどうか」など、企画の意図を汲み取ったうえでなるべく希望を叶えられるような提案をすることを心がけています。ここ数ヵ月は新型コロナウイルス感染症の影響が広がっていますが、そのような状況下でどういった企画にすべきか、どういった景品にすべきかなど、社会情勢と照らし合わせながらタイムリーに適切な判断を行うことも重要です。


三枝

三枝:審査という仕事において、社会情勢や日々世の中で何が起きているのかアンテナを張って情報をキャッチアップすることは大事ですよね。判断材料となる情報がなければ、そもそもリスクに気付くことも正しい判断もできなくなってしまうので。過去に事例がないものについては、法務やリスクマネジメント部門と意見を交わし、総合的に判断したうえで結論を出すというプロセスを大切にしています。

いかに付加価値を提供し事業に貢献するか

ーー「審査」というと堅くて厳しいイメージがあったのですが、事業活動がうまく回るよう背中を押したり状況に応じて柔軟に対応したりと、いろいろな側面があるんですね。


三枝

三枝:「事業に貢献する」ということは常々考えていて、チームミッションにも掲げています。「安心安全を守る」ことは審査において当たり前だと思っていて、それ以上の付加価値を提供していこうとメンバーの皆にも伝えているんです。私たちの付加価値とはつまり事業に貢献すること。それをいかに体現するかを自分たちで考えて動くようにしています。


清水

清水:こちらから提案した結果、事業側がやりたいことが実現できて売り上げにもつながったり、「あの施策よかったよ」と感謝の言葉をもらえたり、そういう瞬間ってすごくやりがいを感じますね。


鶴見

鶴見:「指摘してもらわなければ気付けなかった。ありがとう」と言ってもらえるとやっぱり嬉しいですよね。


清水

清水:こぼれたボールを拾うというか、本来は管轄外の仕事でも部門間のつながりを活かして能動的に解決まで持っていくということも多いですね。最近では、新規プロダクトリリースにあたっての法務や知財関連のタスクについて、審査チーム主導で整理を行い、リスト化するといった対応も行いました。

「背中を押す」「ブレーキをかける」両方のバランスが大切

ーー審査業務に関して、他社にはないグリーならではの特徴はありますか?


三枝

三枝:他社では法務部門やCS部門が審査業務を担っているところもあると聞いているのですが、グリーではアプリ審査チームが独立して機能していて、幅広い法令やリスクを見ているというのが一つの特徴といえると思います。グリーグループ全体を横串で見ることができるので、「グリー担当だからポケラボのことは全く分からない」ということがないんですね。リスクが発覚した時にも多角的な視点で考えることができるし、全社でのリスク対応力の底上げにもつながっていると思います。


鶴見

鶴見:横断的に見ていることでさまざまな情報や知見が集まってくるので、AのプロダクトでやったことをBでも活用してムダを省くというように、全体の工数削減に貢献できていると感じます。


三枝

三枝:品質の標準化がしやすいというのもありますよね。グリーでやってみて良かったからポケラボにも展開し、どちらの品質も上げるなど、横展開しやすい体制だと思っています。


清水

清水:そうですね。これまでもインシデントが起きた際や事前に検知したリスクなどについては資料にまとめて社内に共有するなどしていますが、こうした活動がこれから起こり得るかもしれない問題や損失を未然に防いだり全社への啓発につながっていたりするので、自分たちの役割や責任の重さを実感しています。


三枝

三枝:時には「これはできません」とNOを突き付けなければならない時もあって、やるせない気持ちもありますが、そこは割り切って対応しています。本当の意味で事業に貢献するためには、プロダクト側が実現したいことを後押しすることと必要な時にしっかりブレーキを踏むことの両方のバランスが大事です。

審査のあるべき姿を模索し続ける

ーー最後に、今後に向けて意気込みをお願いします。


清水

清水:先ほど「距離感を近づけるのが大事」という話をしましたが、話しづらいと感じられてしまうと相談されるべきことが回ってこなくなり根本的な問題解決につながらないので、プロダクト側と協力して企画段階から情報をキャッチアップし、より近い存在になれるよう努力していきたいです。また、新入社員を対象に主に法令観点でのリスクや事例について研修を実施していたり、最近では全社向けに審査に関する記事を配信開始しておりますが、コンプライアンス意識向上のために、こうした啓発活動にも力を入れていきたいですね。究極的には、私たち審査側から出すNGがゼロになることが理想です。全社に向けて情報発信を続けていきます。


鶴見

鶴見:当社は過去にリスク案件を発生させてしまったことがあるので、同じことを二度と起こさないような審査体制の構築に注力しています。リスクが起きないことを大前提に、事業側がやりたいことにどんどん挑戦できるよう応援していきたいですね。以前はCSチームにいたので、「この仕様や表示をお客さまはどんな風に感じるか」といった視点での審査ができるのが自分の強みだと思うので、幅広い観点から事業への貢献を図っていきたいと思います。


三枝

三枝:アプリ審査チームの前身となる組織が2010年に立ち上がり、2012年のコンプガチャ問題を機に再発防止と審査機能の強化を図ってきました。日々さまざまな課題をクリアしながら機能拡充を続けてきて、業務品質や運用面では一定成熟してきたことを実感しています。直近では、「審査時点でリスクを回避する」ではなく、前段階の「企画時点でリスクを回避する」為に、事業側に対し積極的に情報を発信していくフェーズに入ってきています。審査というのは、どんな体制で何ができていればよいのか決まりきった正解がないので、他社の取り組みも参考にしながら自分たちがどうあるべきかを常に模索していきたいと思っています。問題が起きてから対策を講じるのではなく、「問題が起きないよう未然に防ぐこと」は永遠の課題です。社内の連携体制がどうあるべきか、我々がどんな動きをすればリスクを最小限に抑えることができるのか、たえず追求し続けていきます。

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