グリーでは、2018年より、毎年、春と秋の2回、信州大学教育学部の学生向けに講演を実施しています。本講演は、情報教育の推進者育成の一助となるよう、総務省信越総合通信局と信州大学教育学部、安心ネットづくり促進協議会が連携して開催しているもので、企業講師としてグリー株式会社 社会貢献チーム マネージャーの小木曽 健も例年登壇しています。
今回は、当日の様子や受講生のインタビューをご紹介します。
11月初旬、冷たく澄んだ空気の中、長野県長野市に位置する信州大学長野(教育)キャンパスでは、多くの学生が講義室に集まり講演がスタートします。
講師は、情報の持つ意味や情報教育の重要性を伝えていく中で、ネット上で個人情報を出すことについて、「渋谷のスクランブル交差点で個人情報を書いたスケッチブックを持って立たないですよね?」と現実のシチュエーションを交えて問いかけをしたり、「自宅の玄関のドアに貼っても構わないような内容だけ発信しましょう」と学生がイメージしやすい例えを用いたりし、小気味よく話をしていきます。
講演中は真剣な眼差しでメモを取る姿が見られ、また、積極的な意見交換もあり、教職を志す若い方々の前向きな想いが伝わってきました。
講演後、参加された学生の皆さんからお話を伺いました。
ーーー 今回の講演で一番印象に残ったことを教えてください。
村山さん:匿名という性質上、ネットは誰にも言えないことを書きやすい場であると感じています。また、些細なことで自身のみならず他人の情報までを公開してしまう危険性も孕んでいると感じています。だからこそ留意すべきことがあるのですが、具体的な線引きが難しいのも事実です。そんな中、「玄関のドアに貼れるか」は良い指標になると思いました。将来教壇に立って子どもたちに説明する際にも分かりやすい表現だと思います。
関さん:私は学生団体でイベントの企画運営をしているので、実名や所属を明かした情報発信をすることも多く、SNSとの付き合い方は自分ごとだと感じています。日頃から自分の投稿が安全なものなのか判断が難しいと感じていましたが、「自宅の玄関」や「スクランブル交差点」など、直感的でわかりやすい設定や象徴的な場所を使って教えていただいたので、今後、判断する際の軸として活用できそうです。また、講師の方の緩急をつけた落語的な表現にも興味を惹かれました。
竹内さん:SNS投稿について「これは投稿しない方が良い」という解釈は人によって異なるため、判断が難しいと感じていましたが、「自宅の玄関に貼り付けられるか否か」という基準は大変分かりやすく印象に残りました。
ーーー 将来、教師として「子どもたちに伝える側」になった時に、どのように伝えていきたいですか?
村山さん:ちょっとした呟きや写真の投稿などの些細な情報発信で、自身だけでなく友人等の個人情報に繋がってしまうリスクはしっかりと伝えていきたいです。ただ、「ネットは道具である」からこそ、正しく使えばより生活を豊かにすることができるということも併せて伝えていきたいと感じました。子どもたちにとって身近なYouTuberなどの例も取り上げながら、より分かりやすく伝えられたらと思います。
関さん:新しい出会いに繋がるというメリットから、リアルタイムでSNS発信することが多くあります。ネットには良い面も悪い面も両方あるので、子どもたちにはそれらをどう伝えるべきか悩んでいました。今回の講演の中での「玄関のドア」といった直感的なキーワードを使い、子どもたちに分かりやすく、ネットとのより良い付き合い方を伝えていきたいと思っています。
竹内さん:友人がSNSで被害に遭いそうになった経験もあり、画像だけでなく、投稿時間や場所といった要素まで気を付ける必要があると改めて感じました。子どもたちにもそういった注意すべきポイントを伝えられるよう、これから私も学んでいきたいと思っています。
信州大学准教授 森下孟先生からもコメントをいただいております。
ICT(情報通信機器)を自由自在に使って便利に生活している子どもたちに対して、その危険性などを適切に指導できる学校教員の養成が求められています。小木曽さんのような全国各地の学校で講演されている方のリアルな経験と声は、子どもたちに対する情報モラル指導法を学ぶだけではなく、学生たち自身の生活のあり方にも目を向けるきっかけとなっています。社会や教育のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進むなかで、子どもたちが安心・健全に日常生活を過ごすために、教員養成段階から情報モラル指導力を高めていくことが学校現場では期待されています。
学生たちとの対話を通して、教職を志す大学生の皆さんが正しい知識を得て、将来教育現場に立った時に子どもたちにしっかりと伝えることができるようにすることが、情報教育において重要であると改めて感じました。インターネットを楽しく、より安全にご利用いただくため、グリーは今後も情報リテラシー向上にむけた活動を積極的に続けてまいります。