【トップインタビュー】ポケラボ×アニプレックスが協業で魅せる真価

~『魔法少⼥まどか☆マギカ Magia Exedra』リリース記念座談会~

グリーグループは、2024年4⽉に、株式会社WFSのゲームブランド「ポケラボ」が、
新作アプリゲーム『魔法少⼥まどか☆マギカ Magia Exedra』の開発・運営を担当することを発表しました。
『魔法少⼥まどか☆マギカ』は魔法少⼥をモチーフにした作品で、2011 年のアニメ放送以降、今も根強い⼈気を誇るコンテンツです。
版権を持つ株式会社アニプレックスと、スマートフォン向けゲームの企画・開発・運営を手掛けてきたポケラボが協業に至った経緯とは?協業することでどのようなシナジーが生まれたのか︖
グリーグループでゲーム・アニメ事業を統括する前田さん、株式会社アニプレックス 代表取締役社長の岩上さん、そしてアニプレックスを傘下にもつ株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント 代表取締役社長のキャリアを経て、現在は、グリーホールディングス株式会社 社外取締役に就任している⽔野さんの3名に語っていただきました。

※以下敬称略

水野 道訓:グリーホールディングス株式会社 社外取締役
1981年4月に株式会社CBS・ソニー(現:株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント)に入社し、主にキャラクターやソリューション関連ビジネスに携わる。株式会社ソニー・クリエイティブプロダクツ代表取締役社長、株式会社ソニー・ミュージックコミュニケーションズ(現:ソニー・ミュージックソリューションズ)代表取締役社長、ソニー・ミュージックエンタテインメント代表取締役 CEOなどを歴任し、2020年6月、公益財団法人ソニー音楽財団理事長に就任(現任)。2023年9月、グリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社) 社外取締役に就任。


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岩上 敦宏:株式会社アニプレックス 代表取締役社長
1997年に株式会社SPE・ビジュアルワークス(現・アニプレックス)に入社。アニメ制作のプロデューサーとして多数の作品に携わる。2016年4月にアニプレックス代表取締役社長に就任。2019年4月にソニー・ミュージックエンタテインメント執行役員に就任、2023年4月に同社取締役に就任し、ビジュアル&キャラクタービジネスグループを統括。2021年に第40回藤本賞、第16回渡辺晋賞を受賞。



前田 悠太:グリーホールディングス株式会社 取締役 上級執行役員
2006年に株式会社ジャフコ(現:ジャフコ グループ株式会社)に入社し、主にIT・モバイルセクターのベンチャー投資・育成に従事する。2009年7月、株式会社ポケラボ(現:株式会社WFS)に入社し、取締役CFOとして経営管理部門を担当。2011年12月、株式会社ポケラボ代表取締役社長に就任。2012年11月、グリー株式会社(現:グリーホールディングス株式会社)に入社。2013年9月より、当社 取締役を兼務。2022年7月より、ゲーム・アニメ事業を統括する。

『まどか☆マギカ』ファンの期待を越えるためのポケラボとの協業

ーー水野さんは現在、グリーホールディングスの社外取締役を務めていらっしゃいますが、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下、ソニー・ミュージックエンタテインメント)のCEOとして傘下の株式会社アニプレックス(以下、アニプレックス)の経営に関わってきたキャリアもお持ちです。岩上さん、前田さんとのお付き合いはどのくらいになるのでしょう。



水野:岩上さんとはもう20年以上になるのかな。岩上さんは『劇場版 「空の境界」』のプロデュースをした頃からめきめき頭角を現してきて、『魔法少女まどか☆マギカ』(以下、まどか☆マギカ)のTVアニメがスタートしたのが2011年か。他にもヒットを連発して、それをきっかけにアニプレックスは一気に上昇気流に乗り、ソニーグループを牽引していく存在になった。その立役者が岩上さんだよね。



岩上:水野さんがソニー・ミュージックエンタテインメントの社長に就任されたのは2015年ですが、その年に『Fate/Grand Order』、2017年に『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』(以下、マギアレコード)とアプリゲームがヒットし、2019年に『鬼滅の刃』の放送が始まっているんですから、“持っている”方ですよ。僕がアニプレックスの社長に就任したのが2016年なので、社長にしてくれたのは水野さんだと思っています。



水野:前田さんと会ったのは、2017年ごろかな。グリーホールディングスの田中社長と一緒に尋ねてこられて、メタバースの展開について話をされたんですよね。その後、久しぶりに会ったのが3年前くらいで、社外取締役の話を聞いた時は、ちょっと驚きました。というのも、僕はゲーム会社にいたわけではないから、ゲームそのものについては詳しくないんです。でも、エンタメを多角的に展開してきたこれまでの経験やノウハウが、今後のグリーの成長に役立つのならということで、お引き受けしました。それから少しして今回の協業の話を聞き、これも驚きました。『まどか☆マギカ』は、岩上さんが大事にしてきたIPでしょう。



岩上:そうですね。『マギアレコード』のリリースから6年が経過して、アニプレックスと、協業先の株式会社 f4samurai(以下、f4samurai)のメンバーから「タイトルをアップグレードしたい」という意見が出てきたんです。3Dを駆使した現代的なグラフィックなどを用いて、ユーザーにもっと楽しんでもらえるようにしたいということで、新たな取り組みをすることにしました。


ーーその新たな取り組みで、開発・運営の担当にポケラボを選ばれた理由を伺えますか。



岩上:f4samuraiのスタッフの方々と、グラフィックのレベルを上げていくにはどうしたらいいかという話をする中で、ポケラボさんとの出会いがあったんでしたよね。



前田:そうです。その流れともう一方で、僕はアニプレックスさんと仕事をしたいとずっと思っていて、コロナ禍以前から岩上さんたちとも定期的にお会いしていろいろな企画の話をさせていただいていました。そんな中で、2021年の初頭に『まどか☆マギカ』の新しいゲーム開発についての話を聞き、ほぼ時を同じくして、f4samuraiさんからも連絡をいただいて。そこからはトントン拍子に話が進み、キックオフまで早かったですね。



岩上:前田さんや田中さんとはいろいろな話をさせていただいてきて、一緒に仕事をする機会があればいいなと、私も思っていました。でも、今回の『魔法少⼥まどか☆マギカ Magia Exedra』の協業はトップダウンで決まったわけではないんです。『まどか☆マギカ』チームがつくりたいゲームがあって、そのためにポケラボさんが必要だと現場の意見が一致した結果なので、スタッフから協業が決まったと聞いて、よかったなと思いました。

ーー今回の座組について、前田さんからご紹介いただけますか。



前田:アニプレックスさんが原作・版元で、プロデュースもされています。f4samuraiさんには全シナリオの制作、Live2D制作、作品監修のほか、さまざまなサポートをしていただきました。弊社では、ゲームシステムや3Dグラフィックスも含めた開発と、リリース後の運営を行います。外部スタッフも含め大人数で取り組んでいるため、ちょっとしたカオスです(笑)。

協業することで互いに高め合い、高い成果が得られている

ーー水野さんは、今回の協業に対して、どのような期待をお持ちですか。



水野:田中社長や、前田さんはじめ、グリーグループの幹部の人たちと話してみて、極めてテック系の会社なんだと改めて感じています。確かなテクノロジーに裏打ちされたクオリティの高さがあり、そこに対する自信もある。対して、アニプレックスはIPコンテンツを育てることが得意中の得意です。これはあくまで僕の考えですが、IPコンテンツを軸にアニメやゲームを展開するアニプレックスと、圧倒的なテックとその精度の高さを武器に、質の高いゲームやその他のコンテンツの提供を目指すグリーグループとは非常に相性が良くて、互いの強みを生かし合うことで、ものすごくいい作品ができる可能性がある。今回だけでなく、例えば、現在グリーグループが運営に関わっているプロダクトを、アニプレックスと組んでアニメ化するなんてことができれば、面白い相乗効果が期待できると思いますよ。



岩上:『まどか☆マギカ』は最初のテレビアニメからもう14年ぐらい経ちますが、配信で見ると今でも面白くて、若いユーザーが増え続けています。昨年の7月にアメリカのロサンゼルスで開催された「Anime Expo」にも行ってきましたが、まどかのコスプレはコロナ禍前よりも増えています。こういう新しいファンにも届くようなゲームになることを期待しています。これまでの成果物を見ると、グラフィックは綺麗ですし、キャラクターも可愛く描けていて、すごくいいものができてきています。ファンも必ず喜んでくれると思うので、この先も大変なことばかりだと思いますが、ぜひ、いいコンテンツに仕上げていただきたいですね。


『魔法少女まどか☆マギカ Magia Exedra』Final PV



前田:そう言っていただけると、現場の士気も上がります。昨年7月に今回のゲーム動画を一部公開させていただいた際、アニプレックスのプロデューサーの方々はやっぱりすごいなと思ったのが、ファンの方々の期待に丁寧に応える部分と、この先どうなっていくんだろうという想像を掻き立てる部分との、バランスやさじ加減が絶妙だなと。そういう部分でも僕らは刺激を受けています。それと、何がうれしいかって、ファンの方々からの良い反響をすごく沢山いただけていること。そういう声に開発現場も支えられています。開発佳境に入ってくると現場はだんだん余裕がなくなってくるんですが、そんな中でも、お互いの役割や状況をリスペクトし合いながら、「もっとこうしたいね」とか、「こうしたらいけるよね」という、前向きな意見交換ができています。考え方やバックグラウンドが異なる者同士でこのような意見交換ができるっていうのは、共同開発の醍醐味かなと思っています。



岩上:違う土壌で仕事をしてきて、それぞれに異なる経験値とかノウハウがあって、時には対立することもあると思うんです。でも、その違いをぶつけ合うことでお互いを高めていくということができているのではないでしょうか。



前田:それは間違いないですね。開発をスタートしたのが2021年の終わりで、当時は思い描いていた独特のクオリティを実現するのはかなり難しいと思っていたのですが、今、それを実現できる技術レベルに達しています。これは想定以上で、岩上さんがおっしゃったように、高め合うことによって得られた成果の一つだと思います。



水野:予想以上のクオリティで開発が進んでいるのは、それだけ現場に熱があるということじゃないかな。いい作品を生むには、現場の人たちの熱、熱さが欠かせません。現場の人間に作品のファンがいることもあるし、ファン目線で「もっとこうしたい」、「これがやりたい」と、現場が盛り上がっていくこともヒットを生む大きな要因なんです。

ーーエンタテインメント業界では複数の企業が合同で製作に携わるケースが多くみられますが、協業することの意義や、そこから生まれてくる可能性について、水野さんのご意見を伺えますか。



水野:今回のポケラボとアニプレックスの協業もそうなんだけど、お互いの強みをうまく生かしていくことで、新たな可能性が開けてきます。自社にない強みを持っている会社と組むことでワンコンテンツ・マルチユースが可能になり、そうすることで大きなヒットが生まれるケースは多く、ロングランでヒットしているIPコンテンツの多くは複数企業と組むことで大きくなっています。もう一つ言えるのは、音楽もアニメもゲームも、ビジネスモデルがどんどん変わっていて、しかもその変化のスピードがものすごく速い。そのすべての変化に自社だけで対応しようとするよりも、それぞれで強みを発揮している会社と組んでいくことが必要だと思います。

『まどか☆マギカ』ファンが喜んでくれるゲームになると信じている

ーー岩上さんから、開発・運営に取り組んでいる現場スタッフに激励の言葉をいただけますか。



岩上:現場の方々には感謝しかなくて、引き続き頑張ってくださいのひと言に尽きます。「こうしてみたけど、こうやった方がよくなりそうだから、もう一回やってみよう」っていうチームだと思うので、作品に対して真剣に取り組めば取り組むほど大変になっていくという状況ではないかと思っています。繰り返しになりますが、『まどか☆マギカ』ワールドが集約していくような内容になっていて、本当にいい出来栄えで、僕自身もプレーするのが楽しみです。『まどか☆マギカ』ファンが必ず喜んでくれるゲームになると信じています。

ーー前田さんから、リリースに向けた意気込みをお願いします。



前田:そうですね。開発が佳境に入り、スタッフの疲労もたまってきた昨年7月頃、決起会を開催したのですが、そこで、ゲーム動画公開の反響などの話をしたら、みんな笑顔になるんですよ。あの笑顔を見て、「もっとよくなるな」と確信しました。期待されているファンの姿が目の前に見えているので、中途半端なところで妥協せず、ファンの皆さんの期待を超えるものを目指して頑張ります。



水野:現場のスタッフが持っている熱をただ放出させるのではなくて、必要なタイミングで引き出すのがプロデューサーの役割の一つで、そこをうまくコントロールできるのが名プロデューサーだと思うんだけど、岩上さんも前田さんも、さすが名プロデューサーだなと感じました。アニプレックスとポケラボ、双方の取り組みに関われることに感謝すると同時に、今後の展開に期待しています。

終始和やかな雰囲気の中、今後の展望など、明るい未来が見える座談会となりました。