企業のデータ活用を促進するための研究機関「Glossomデータインサイトラボ」を設立したGlossom株式会社。その第一段の取り組みとして、「スマートフォンでの情報収集に関する定点調査」を実施しました。
事業において長年蓄積した高度なノウハウや質の高いアドテクノロジーを提供するほか、データ分析とその活用に注力することになった背景について、データアナリシス部の皆さんに聞きました。
吉本:Glossom株式会社 執行役員
システムコンサルティング会社、グリー、ランサーズを経て、クオント株式会社を立ち上げ。グリーによるクオント子会社化に伴いグリーグループに戻る。現在はGlossomにてデータを活用したマーケティング支援事業を担当。
籠島:Glossom株式会社 第一代理事業本部 データアナリシス部
前職ではオークションシステムの運用・開発等を経験し、Glossomに入社。現在はデータエンジニアリングチームのマネージャーとして、事業支援のための分析基盤構築や技術サポートを担当。
松下:Glossom株式会社 第一代理事業本部 データアナリシス部
ランサーズにてデータ分析を担当し、新規事業の1つであったクオントに参画。現在はGlossomデータマーケティングチームのマネージャーとして、多種多様な事業の支援を担当。
陳野:Glossom株式会社 第一代理事業本部 データアナリシス部
クオント株式会社設立時の2016年から参画。Glossomデータインサイトラボのチーフデータアナリスト。
アドテクやマーケティング領域でデータを活用し、他社との差別化を計る
ーー「データマーケティングエージェンシー」とあるように、Glossomがデータ分析に力を入れるようになったのはなぜでしょうか。
吉本:元々は、弊社の代表である足立と、ランサーズの新規事業としてDMP事業であるクオント株式会社を立ち上げ、2018年にグリーグループの傘下となりました。Glossomはグリーグループのエージェンシー・アドプロダクトを事業としていたので、クオントとの合流によってデータを活用し、マーケティングデータベースの構築からデータ蓄積・分析・施策立案、実行までを一気通貫して支援することが可能になりました。データ×アドテクや、データ×マーケティングを事業の核とすることで、他社との差別化を計っています。
ーー具体的に、アドテクやマーケティングの領域で、データがどのように活用されるのでしょうか。
松下:例えば、出版社や新聞社など紙媒体のメディアが、Webメディア事業に進出する際に取り入れていただくことが多いです。こういった企業さまは当然優れたコンテンツ制作のノウハウをお持ちですが、我々の方がWebメディアの作り方やマネタイズの部分の知見はありますので、そこを支援します。
通常の広告効果測定では、「UU数は何名で、コンバージョンが何名遷移した」といった範囲をレポーティングすることが多いです。一方Glossomでは、訪れたユーザーの属性や読み進め方を分析して、狙い通りの読者に届いたかどうかや、訪れたユーザーのロイヤリティ、どこで離脱したかなどのデータまで測定できます。
記事の冒頭で離脱したなら、TOP画像やタイトルと記事の内容が噛み合っていなかったのかもしれません。また、若年層は最後まで読んでいるとか、高齢者層は途中でやめているとか、そうした記事とユーザーの詳細な掛け合わせを見ることが出来るので、記事の読まれ方まで深掘りしたリッチなレポーティングが可能なのです。
ーーそうした技術はGlossom独自のものですか?
籠島:Glossomは企業のコンテンツマーケティング領域において、読了率や読者のロイヤリティをもとにした解析から、コンテンツ、メディア、ライターを評価する3つの特許を取得しています。
大量のメディアのデータをこの評価技術を用いて解析することで、単なる記事自体の良し悪しを超えて、コンテンツと読者、コンテンツとライターの相性や、メディアを跨いだフラットな評価が可能となりました。今まで積み上げてきたこうした分析手法は、まさにGlossom独自の技術と言えます。
ユーザーの態度変容や世の中のトレンドの変化を解析し、わかりやすく発信する
ーー「Glossomデータインサイトラボ」を設立したのには、どのような経緯があるのでしょうか。
陳野:私たちは日頃、企業さまが収集したデータを預かり、分析して得られたインサイト(潜在的なニーズ)を事業運営にご利用いただきます。インサイトの背景には必ず世の中の動きや時代背景があり、その中にユーザーの心理変化があるので、企業のデータ解析だけでなく、そうしたことを踏まえたインサイトを抽出したいと考えていました。
近年のソーシャルメディアやモバイル機器の浸透により、ユーザーにどのような態度変容が起こっているのかを調査し、自社ツールやソーシャルログで世の中のトレンド変化を解析しようと試みたのが「スマートフォンでの情報収集に関する定点調査2020」です。
ーー定点調査を行うにあたり、発信先のターゲットはどのように設定されたのでしょうか。
陳野:企業のマーケティング担当者をメインターゲットに据えていますが、幅広く設定しています。実際、リリース後の反響はマーケティング担当者の他に、新聞社や広告代理店からも寄せられました。
「調査系レポートは足が長い」といわれるように、リリース後しばらく時間が経っても問い合わせが寄せられるので、ある程度の手応えはありました(笑)。また、社内で勉強会を開いたところ、営業部から積極的に質問が寄せられ、社外だけでなく社内でもデータの扱いを考えてもらうきっかけになったかと思います。
ーー今後、データインサイトラボではどのような活動を予定されていますか。
陳野:継続的な情報発信に加えて、今回の定点調査を深掘りしたレポーティングに取り組みたいです。データ一つひとつの奥が深いので、深掘りによってさらに世の中の流れが見えてくるでしょう。さまざまなデータ分析を行い、調査結果を発表することで、企業のデータに基づいたマーケティング推進に寄与したいと考えています。
吉本:データ分析の活用については、社会的にその有用性は認められつつも、多くの企業では期待されているほどデータ活用による効率化やPDCAは回せておらず、まだまだ伸び代があります。
対ユーザーに関しては、データ利用はプライバシー重視のトレンドです。さまざまなデータの取り扱いが難しくなるなか、企業がどのようにユーザーと適切な関係性を築いていくか、インターネット広告のこれからを考える上でもデータ分析は役立つと思います。
ユニークで自由度の高い環境を活かし、データ活用の可能性を広げていきたい
ーーGlossomとしては、今後どのような事業展開を見込んでいるのでしょうか。
吉本:現状、ナショナルクライアント中心のデータ分析、および事業会社支援を伸ばしています。企業のデジタルマーケティング戦略に携わり、ユーザーデータ、購買データなどの提供データを蓄積するマーケティングデータベースを構築して、デジタルマーケティングのPDCAを回す支援を行うサービスです。直近はEC領域にも展開し、対メディアのデータ解析、持ち前のツールなどを活用しています。
ーーGlossomはさまざま経緯を経てユニークな組織となられたようですが、その面白さをどのように評価されていますか?
籠島:取り扱うデータの幅広さが特徴の一つです。現状は事業支援、PR、社内制作サービスのデータも一部分析用に加工しています。他にも事業会社の購買ログ、会員ログ、Webログ、アプリログ、広告ログといったありとあらゆるデータを扱います。技術の仕事は突き詰めるときりがないので、限られた時間の中で何を取捨選択するか、自分で決められるのが面白いところです。
松下:データ分析は日頃の趣味になるほど面白いですね。メンバーも楽しんでデータに向き合う人が多いと感じます。仕事の合間にTwitterのバズワードを分析し、仮説を立ててマッピングし検証してみるといった遊びをするほど。日頃からスピーディーに物事が進む組織だと思いますね。
陳野:データ分析自体は基本的に苦しい作業ですが、インサイトを求める過程で、世の中にまだ知られていない、自分だけが新しく知り得る情報が現れるのが面白いですね。
私のようなスペシャリストのポジションも、エンジニアもマーケターも、それぞれの距離が近いので、全プロジェクトに一丸となって取り組んでいる実感があります。
吉本:私は現場でデータ分析にあたる立場ではありませんが、対象を整理して新たな意味を見出すことや、理解する過程が面白いと感じます。テクノロジー全般に興味を持ち、テクノロジーの変化がどんな可能性を与えるか考えていて、ポテンシャルの高い人であれば誰でも迎え入れられる良い環境だと思っています。
ーー皆さんありがとうございました!データインサイトラボの今後の活動に期待しています。
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