グループシナジーが生み出した『REALITY』海外マーケティング成功の裏側

2020年10月に海外展開を始めた『REALITY』は、2021年夏、USのGoogle Playにおいてソーシャルカテゴリーランキングで5位に浮上するなど、大きな話題となりました。今回『REALITY』の海外出稿をリードしたGlossomの取り組みと、グループだからこそ成しえた実績についてGlossomとREALITYの双方の担当者にお話しいただきました。

柴田柴田:2008年、グリー株式会社に入社。2016年12月よりグリーアドバタイジング株式会社代表取締役社長、兼Glossom株式会社取締役。

柴田望月:2019年、Glossom株式会社入社。エージェンシー事業本部 マーケティング部 メディアマネジメントグループ メディアマネジメントチーム所属。REALITY担当として、運用やマーケティングに関わる。

柴田加藤:2018年、REALITY株式会社に入社。Bizdev & Marketing部 Marketing チーム マネージャー 主務。広告出稿を中心としたREALITYのマーケティング業務を担当。

グループ内でデータやノウハウが蓄積され、基盤ができたところで海外マーケティングへ

ーー『REALITY』の海外展開についてのGlossomの取り組みはどういう経緯で行われたのでしょうか?


柴田

柴田:Glossomはグリーグループにおけるデジタルマーケティング領域を共通機能としてご一緒させて頂いているのですが、Glossomが本格的にかかわる以前はポケラボやWFSなどゲーム事業が各事業部個々でマーケティングを行ってきました。
ただすべてを自前でそろえるよりもグループ内で情報共有しながらの方が効率的な場合もあり、徐々に横断して我々がマーケティングのサポートをするようになった経緯があります。
やはり、グループ内での知識やノウハウをお互い共有し合う事で、シナジー効果も見込めますしメリットは大きいと思います。そのグループ内での基盤が出来たころ『REALITY』の海外展開の計画が動き出し、これまで築いてきた共通機能の基盤でGlossomにてデジタルマーケティングを推進する運びとなりました。


加藤

加藤:『REALITY』は2018年に日本でアプリをリリースし、順調にユーザー数を増やしていったのち、2020年10月に最初の海外展開としてタイでリリースしました。その後、ブラジル、ベトナム、韓国など、段階的に展開し、最終的に現在は63の国と地域へ広がっています。リリースにあたっては、まず少額の予算でテストマーケティングを行い、ユーザーの反応に合わせマーケティングの継続や規模の拡大をすべきかどうかをGloosomと検証しています。

ーー多くの地域にリリースしていますが、海外でもすぐに受け入れられたのでしょうか。


加藤

加藤:マーケティングを開始した頃は、『REALITY』のアニメテイストのアバターでコミュニケーションを楽しんでくれる方がどれくらいいるのか未知数で心配の種は尽きませんでした。海外の方が使ってくれるのか、アバターなどのガチャを回してくれるのか、もちろん地域ごとに経済状況も違うわけですから。
まずは数字の傾向を読み取って動くようにし、よかったところはさらに伸ばすために分析を行いました。

ーー1カ国にかけるマーケティングの規模の検証期間というのはどれくらいの長さなのでしょうか?


加藤

加藤:国や地域によって反応の差があったので、テストマーケティングは大抵数週間で判断していました。どの地域も想定より低単価でユーザー獲得ができていたこともあり、継続率と課金などのアプリ利用のKPIも検証項目として見ていました。そんな中、2021年5月にアメリカでリリースした後のマーケティングで、他の国や地域に比べて圧倒的にいい結果が出たのでさらに予算を追加してマーケティングの規模を拡大しました。

マーケティング開始から数ヶ月での『REALITY』第5位の衝撃

ーー実際にアメリカでの反応を受けていかがですか?


加藤

加藤:ユーザーの継続率も高かったですし、課金の伸び方も非常によかったです。
プロモーションの効果がハッキリわかったのでこれならばさらに予算を増やしても勝ち筋があるだろうと、投資予算を見つつできるところまで行こうとドキドキでしたが決めました。

ーー具体的にはどういった施策を打ったのでしょうか?


望月

望月:基本は日本で行っているデジタルマーケティングと同様、Web広告での展開です。ただ、今までとは全然規模感が違うため、やれることが変わっていったという感じを持ちました。SNSをメインに展開していったんですが、ほかの案件と比べても明らかに反応がよく、急激に伸びていきました。「これは行くべき!」という判断になり、どこまで予算を使えそうか試算して、倍々ゲームの勢いで増やしていきました。今まで経験したことのないような規模感で広告の運用をして、さらにそれを上回る結果をたたき出すという感じでした。


加藤

加藤:マーケティングを行う前の海外展開当初、北米での『REALITY』の認知状況は決して高いとはいえませんでした。リリースからじわじわと認知されていった感じです。


望月

望月:それがプロモーションを始めると一気に火が点いて、そこからすぐにアメリカ国内のSNSアプリダウンロードランキングで上位になったんですよね。


加藤

加藤:そうなんです、一時期はGoogle Playのソーシャルカテゴリで『REALITY』が5位にランクインしました。

ーー5位!!


加藤

加藤:上には有名なSNSアプリなどメジャーなものしか並んでないという。社内中大興奮です。


柴田

柴田:今までも海外展開はしてきましたが、これほど費用対効果の高い動きもそうそうなかったと思います。それらを支えた背景としては、以前から我々の社員がポケラボやWFSのようなゲームスタジオに常駐し、彼らとともに海外のプロモーション展開をしながらさまざまなナレッジを蓄積してきたのも大きいと思います。そこで得られたトライアンドエラーの経験値や、メディア側とのリレーションなど、グループとしてのデジタルマーケティングの蓄積が花開いた瞬間だったのではないかと。

ーー英語圏以外の他言語対応についてはいかがですか?


加藤

加藤:2022年1月に韓国語や簡体字、繁体字、ドイツ語など、10言語を追加しています。施策やお知らせといった細かい更新の必要な部分のローカライズについてはまだ課題がありますが、アプリ本体の他言語対応については、順次対応が進んでいます。


望月

望月:配信先の地域が多い分、配信準備など大変なところもありました。しかし、『REALITY』の規模まで他言語対応の必要なタイトルを担当する機会は多くはないので、その点はとてもありがたいと思っています。多言語対応の準備は、リリースの予定に合わせてマーケティングプランも2021年末くらいから動き始め、どういう配信設計にしたらよいかなど、いろいろと学ばせていただきました。


加藤

加藤:そうですね。これまで配信したことのない国や地域にも配信し、南米やアフリカにもリリースしました。

同じフロアにいる安心感。グループの連携があるからできる素早い判断と行動を結果へ直結させる

ーーグリーグループ内で横断的にマーケティングを担当する中で、グループシナジーを感じるようなエピソードがありましたら教えてください。


加藤

加藤: Glossom側にデジタルマーケティングのノウハウがあるので、そこはお任せをして、自分たちは事業に集中しながら一緒に動けたのは非常にやりやすかった部分です。社内的な調整もそうですし、動くときのスピード感もグループならではだと思います。実際、マーケティングテストの結果を見て、GlossomとREALITY社とで「これはMAXまで予算投下しましょう」となったとき、マーケティングプランが2日くらいで出て、1週間後には予算が下りていましたから。先ほどのアメリカでのマーケティングで言えば、5〜6月のテストマーケティングの結果を受けて、7月にはさらにプロモーションを投下する。その結果が7月のランキングに表れていたような覚えがあります。検討から実行まで、これだけのスピード感で動けたのは、グループの連携あってこそだと思います。


望月

望月:コロナ禍での取り組みではありましたけれど、『REALITY』側に加藤さんがいてくれる安心感はとても大きかったです。同じフロアで相談しやすい環境というのもスピード感に直結していたと思います。iOSのアップデートでそれ以前にやっていた広告効果の計測ができなくなり対応が必要だったときも、すぐに相談して対応できましたし、グループのアナリストチームにも協力していただいて、必要なデータを正確に出してもらうことで機会損失なく対応することができました。


加藤

加藤: 投資に対する回収判断のポイントについては、数値をある程度正確に収集、分析しておかないと、プロモーションがただお金を投下しただけで終わってしまいます。本当に意味のあるものになっているといえるよう、数字を正確に担保するための集計のルールは、Glossomと開発本部のアナリシスチームにも加わってもらってかなり細かく決めました。

ーー最後に、Glossomと『REALITY』、それぞれの今後の目標についてお聞かせください。


加藤

加藤: 『REALITY』の海外での取り組みは成長段階です。早くグローバルサービスといえる規模まで成長させたいですね。そのためにも海外でのマーケティング活動をきっちりやって、昨年の夏のように再びランキングに入って、さらに成長させていきたいと思っています。


望月

望月:デジタルマーケティングについては、グリーグループ全体で見ているタイトルがいくつかあるので、そこで得られたデータや情報、経験などをうまく活用できるように、しっかり内部に還元したいと思っています。


柴田

柴田:『REALITY』に関しては、業界的にも注目度が高いですし、グリーグループとしてもエンタメかつ、メタバース領域での成長株です。『REALITY』の成功はグループ全体の大きな目標でもありますし、次の新しい事業になりえます。なので、今後もしっかり取り組んでいきたいです。また、外部から新しい要素を入れて、グループのシナジーを高める努力も同時並行でしていきたいと思っています。